大規模斜面崩壊の発生と歴史地震との関係を明らかにした共著論文が日本地すべり学会誌に掲載されました。
栗本享宥・苅谷愛彦・山田隆二・木村誇・目代邦康・佐藤昌人(2025)岐阜県郡上市水沢上の大規模斜面崩壊:地形・地質特性および1586年天正地震との関係,日本地すべり学会誌 62(2),p.56-64
活断層の近傍の山地斜面では、通常は見られないような規模の大きな斜面崩壊の痕跡が見つかることがあり、過去の巨大地震によって発生した可能性が議論されています。
活断層型の地震が数千年の間隔をおいて繰り返すことを考えると、こうした記録には残らないような古い時代に起こった斜面崩壊がどのようなものだったかを明らかにすることは、長期におよぶ山地の地形発達過程解明はもとより、その地域の防災を検討するうえでも重要になります。
今回の研究では、岐阜県郡上市にある「水沢上(みぞれ)の崩れ」とよばれる斜面崩壊地を対象に、詳細な地形・地質調査や埋没木などの年代測定を行いました。
その結果、崩壊堆積物には水の関与の少ない土砂移動現象に特有の破砕構造が発達することや、崩壊堆積物によって河川が堰き止められてできた湖沼堆積物が残されていることが明らかになり、湖沼堆積物中で見つかった埋没木などの放射性炭素年代もこの地域一帯に被害をもたらした天正地震の発生年(西暦1586年)にきわめて近いことが示されました。
ご興味を持たれた方は、ぜひご一読ください。
※著者にお問合せいただければ、コピー(紙媒体)を提供いたします。
現在、電子版は会員のみ閲覧可となっていますが掲載の約1年後にはJ-STAGEにて公開される予定です。
写真1, 2:2018年10月にフィールド調査を行った際の現地の様子。
「水沢上の崩れ」がある長良川水系吉田川の上流域では、7月の豪雨による出水で河岸や河床の侵食が進んでおり、これまで観察できなかった崩壊堆積物の地層面などが地表に表れていました。
写真3, 4:「水沢上の崩れ」の崩壊堆積物より上流で見つかった縞々模様をした湖沼堆積物の地層。
湖沼堆積物の細かい砂や泥(シルト、粘土)のあいだには、木片や樹幹などの有機物が多量に含まれており、放射性炭素年代測定法という手法を用いて、その地層が形成された時代を推定することができます。
写真5(おまけ):フィールド調査後の夕食は民宿もろはしにて猪鍋!
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