【研究概要】

リグニンは芳香族化合物であり、自ら光を発する「自家蛍光」という性質を持っています。しかし、リグニンは天然由来の高分子であり、その化学構造が非常に複雑なため、発光の性質をうまくコントロールするのが難しく、まだ十分に活用されていないのが現状です。リグニンの発光特性を活かして機能性材料を開発するためには、「どのようにすればより強く光らせることができるか（発光強度の制御）」や「どのようにしてさまざまな色で光らせることができるか（発光波長の制御）」といった課題を克服する必要があります。私たちの研究では、リグニンの発色団構造に着目し、樹木の種類や抽出方法を変えることで、その構造に違いをもたらしました。また、リグニンを溶かす溶媒や、混ぜるポリマーを工夫することで、発色団の周囲にある環境（たとえば局所的な濃度や硬さ）を調整し、発光特性を制御することに成功しました。現在は、リグニンの構造そのものを変えるために、熱化学処理や遺伝子組換え技術を使って新しい発色団構造を作り出し、リグニン発光特性の向上を目指しています。

樹種・抽出法の違いや、溶媒、ポリマーの特性によってリグニンの発光特性を制御しています。Tunable Light Emission from Lignin: Various Photoluminescence Properties Controlled by the Lignocellulosic Species, Extraction Method, Solvent, and Polymer

【関連する主な論文】

・Masatsugu Takada, Yutaka Okazaki, Shinya Kajita, Haruo Kawamoto, Takashi Sagawa: Fractionation of beech wood cell walls into digestible cellulose-rich residues and photoluminescent lignin-rich precipitates via semi-flow hot-compressed water treatment with 2-naphthol, RSC Advances, 14(29), 20660-20667, 2024.

・Masatsugu Takada, Yutaka Okazaki, Haruo Kawamoto, Takashi Sagawa: Solubilization of sulfuric acid lignin by ball mill treatment with excess amounts of organic compounds, RSC Advances, 13, 1059-1065, 2023.

・Masatsugu Takada, Yutaka Okazaki, Haruo Kawamoto, Takashi Sagawa: Tunable light Emission from Lignin: Various Photoluminescence Properties Controlled by the Lignocellulosic Species, Extraction Method, Solvent, and Polymer, ACS Omega, 7(6) 5096-5103, 2022.