森林環境制御GEOECOSYSTEM CONTROL AND WATERSHED MANAGEMENT
森林環境制御

主著論文がGeosciences誌に掲載されました

過去の土地利用変遷が斜面崩壊の規模や数に及ぼした影響を明らかにした主著論文がGeosciences誌に掲載されました。
 
Kimura T. (2024) Effects of land cover changes and rainfall variation on the landslide size–frequency distribution in a mountainous region of western Japan, Geosciences, Volume 14, Issue 3, 59
 
 
山地の保全や防災を考えるうえで、どのくらいの規模(大きさ)の斜面崩壊がいくつ発生するかという予測はとても重要です。
これまでの研究でも、過去の災害事例をもとに規模と数の関係が詳しく調べられており、その特徴を一般化したいくつかの予測モデルが提案されています。
これらのモデルは当初、土地の条件や誘因(豪雨や地震)によらず広く適用可能とされていましたが、その後、規模と数が異なる災害事例やシミュレーション結果が報告されるようになったことから、現在は地質や地形の違い、雨の強さなど、その場その場の条件がどのような影響を及ぼすかという研究が進められています。
 
今回の研究では、先日 Water誌に掲載された論文 につづき、芸予諸島の大三島(今治市)を対象に2018年7月豪雨による斜面崩壊の統計データを詳しく解析し、1960年代以降の果樹園(傾斜地農地)の拡大やその後の管理放棄といった土地利用の変化が斜面崩壊の起こり方にも影響を及ぼしていたかどうかを調べました。
 
その結果、1960年代以降に新たに造成された果樹園の斜面では、1960年以前より森林や農地が維持されていた場所よりも規模の大きな斜面崩壊の割合が高くなっていたことが明らかになりました。
また、二次林化した放棄果樹園においても規模の大きな斜面崩壊の割合が高かったことから、1960年代以降の農地造成が(その造成方法ゆえに)斜面を著しく不安定な状態にするものだったこと、その影響は二次林化が進んでいる放棄地も含めて30年以上にわたって続く可能性があることが示唆されました。
一方で、雨量の大小による明らかな違いは認められず、(少なくとも一島の範囲内では)雨の降り方の違いが斜面崩壊の起こり方を変えたという証拠は見つかりませんでした。
 
今回の研究結果は、斜面崩壊の数や規模を予測するには過去の土地利用変化の把握が重要なことを示すものとなっています。
 
 
本論文はオープンアクセス(無償で閲覧、ダウンロード化)となっております。
ご興味を持たれた方は、ぜひご一読ください。

posted at 2024.3.22
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